2話 《恋人》

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 感極まってるな。気持ちはわからなくもない。  そして、わざとじゃないのもわかる。  でも、鼻水を制服につけないでくれ。たのむ。 「彼氏に振られたの」 「え? 田中くんと?」  涙ぐみながらトモミは何度も頭を縦にふる。  だから、鼻水は制服につけないでくれ。わかったから。 「あいつ浮気してたの……もうあたし悔しくて」  学生鞄からあたしはポケットティッシュをトモミに手渡す。  トモミは鼻をかんだ。あたしの制服のブラウスで。  おまえ……。 「なんであたし……悪いことしてないのに!」 「まぁまぁ落ち着いて。話聞くよ。ファミレスでも行く?」 「落ち着けってどうやって?」  あ、やば。  面倒くさいスイッチ押してしまったか。 「いや、それは」 「ううう……欲しいよぉ《恋人が欲しい》よぉ……」  トモミは独り言をぼやきながら、涙と鼻水でくしゃくしゃになっま顔をあたしのブラウスに埋める。  早く帰って洗濯したい。  そう思った。  すると。 「ん? 臭っ!」  魚の臭い  なに? どうした。  原因がなにかあたりを見渡して探していると、頭の上に影が落ちた。  見上げてあたしは唖然となる。  魚の顔をしたおじさんが立っていた。 「……」  真っ白い鱗に赤色と黒色のまだら模様。あと口の左右には長い一本髭。  このフォルム。  わかった。  鯉だ。 「コイ人……だね」  蛆神様についてわかったことはふたつ。  ひとつは、勝手に人の願望叶える迷惑な神様だということ。  もうひとつ。  結構聞き間違いしやすいことだ。 2話 《恋人》 終
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