寝言に返事をしてはいけません

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寝言に返事をしてはいけません

 友達は寝言が酷かった。  クラスも部活も一緒なので、学校行事や合宿やらで寝泊まりする機会が多い。  その際、ほぼ確実にそいつは寝言を口にするのだ。  やかましいという程ではないが、やはり夜中に何か喋り出すと気になって、こちらの目は覚めてしまう。  それでも俺はすぐ寝直していたが、中には面白がって寝言に返事をする奴もいた。  どんな夢を見ているのか、ムニャムニャとよく判らないことを語る友達に、起きてる奴が返事をする。  泊まりで、寝言の友達と部屋が一緒になった時はそれが当たり前の光景になり、からかう奴の行動を誰も気にしなくなったのだが、そのせいでとんでもないことが起きた。  その日は連休を使って部の強化合宿が行われたのだが、宿泊施設に大人数で雑魚寝ができる大部屋がなく、部員は三、四人ずつでいくつもの小部屋に振り分けられた。  俺は寝言が酷い友達と、それ以外に後二人の友達と同室になったのだが、就寝時間がきてそれぞれ布団に潜り込むと、さっそく例の友達が寝言を口にし始めた。  俺はもう慣れっこだし、残る二人の内片方も同じ対応だったが、もう一人が悪ふざけをしたがる奴で、すぐさま寝ている奴の枕元に座り込むと、寝言に返事をし始めた。  でも、いつもならそいつの寝言は話しかける内容にそこそこ対応しているのに、その夜はまったく様子が違っていたのだ。  話しかけている途中で寝言を言ったり、返事としては不適合すぎる内容を口走ったり、これまでとは状態が違いすぎている。  違和感に、話かけている奴が口を閉ざした直後、その声ははっきりと室内に響いた。 「やっと邪魔な人が話しかけなくなった」 「う、ん…そう、だね」  眠ったままの友達が寝言でそう対応する。でも、部屋には割り振られた四人以外姿はないし、誰もそんなことを口にしてはいないのだ。  いったいコイツは誰と喋ってるんだ? 「おい。お前、誰と話してるんだよ?!」
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