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「コタロー、お前……。」
伝わったのか?
「そうだな。くよくよしている場合じゃないな。」
ヤツは抱き上げていた僕をそっと床に下ろすとよしって声を出して勢い良く立ち上がった。
それから急いで僕のご飯と水を多めに用意すると
「アイツの元へ行ってくるから。アイツを絶対、絶対に………死なせないから。」
そう言うとヤツは急いで出て行った。
シナセナイ?
シナセナイ……って。
聞き覚えのあるその言葉に僕はハッとした。
よくその言葉を聞いていたのを思い出したから。
何故なら、彼女は眠る前に僕を抱き寄せると時々
「コタロー、私より先に死なないで。私を置いてったりしないで。お願いだから……」
そういって強く強く抱きしめるんだ。
正直、『シナナイデ』という彼女の言葉の意味が僕にはよくわからなかった。
だって、テレビの中では『シンダ』人が別の日には歌を歌ったり踊ったりピンピンしている。
だから犬である僕なりに考えたんだ。
死ぬっていうのは眠ることなんじゃないかって。
きっと寂しがりやの彼女は一人の夜が嫌なんだ。
たから僕に先に眠ってほしくなくて……
そんな風に思った僕は彼女より先に眠る事をしなかったんだ。
寝室から彼女の寝息が聞こえるまで決して僕は眠ろうとしなかった。
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