4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
なんとか危険な状態を乗り越えた彼女は【シュジュツ】というのをするそうだ。
難しい事は僕にはさっぱり分からないけど、ヤツが『大丈夫』というのなら、そうなんだと思う。
後、彼女が病院にいる間、僕はヤツと生活をすることになった。
これまでの僕なら何が何でも断るところだけど、ヤツも彼女がいないと寂しがるだろうと、情けで一緒に住んでやることにした。
僕なりの優しさだ。
正直、僕はヤツより一日も早く彼女に会いたかった。
ヤツから彼女の話は聞いているけどやっぱり顔を見たい。
ちゃんと声を聞きたい。
すると一度だけ
「いいな、コタロー。絶対、声だすな。ドーナツを差し出されてもだ。わかったな?」
と言われてこっそり病院に連れてって貰えた。
鞄の中に潜りじっと様子をうかがっているとーーー
懐かしい彼女の声が響いた。
「コタ…」
そっと鞄から頭を出してみると、会いたくて会いたくて会いたくて仕方の無かった彼女が目の前にいた。
今、目の前に彼女がいる。
そう思うと尻尾を振らずにいられなかった。
抱きしめて欲しかった。
なのに、
再会も束の間、すぐにヤツに頭をカバンの中にぎゅっと押し込まれた。
ったく……邪魔しやがって。
まぁ、しょうがないけどさ。
一瞬の再会を終え病院を後にしたヤツと僕はいつもの公園に来ていた。
鞄から僕を出すと、ヤツは何やららしからぬ真面目な顔してポツリポツリと話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!