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とは言えーーーー
相変わらず、僕はヤツの事が気に入らない。
そりゃそうだろ?
僕と彼女の間に割り込んで来たんだから。
けれど、こうしてまた公園に来て幸せそうにドーナツを頬張る彼女を見ていると
まあ、いっかと思えるようになっていた。
うっとりと彼女の笑顔に見惚れていると横から耳障りなヤツの声がする。
「なんだコタロー、そんなに見つめて、さてはお前またドーナツ欲しいのか?」
ーーーいらねーよ
「食いたいんだろ?うまいもんなぁ、ドーナツは。」
ーーーだからいらねーって。こいつ、絶対面白がってるだろ。
「まぉまぁまぁまぁ、遠慮するなって。ほら、お手してみな、お手っ?」
くっそー!
体がつい反応するーーーっ!
「よし、ご褒美な。」
ヤツが差し出した一欠片をパクリ。
うぅーー、やはりドーナツは美味い。
そんな僕達の様子を見て彼女が笑う。
クスクスと笑う。
つられてヤツも笑い出す。
だから僕もついつい嬉しくなって、一生懸命に尻尾を振るんだ。
楽しいねって。
幸せだねって。
一生懸命振っては彼女とヤツの頬をペロリと舐めるんだ。
だって、僕は犬だから、
それが僕なりの
犬である僕なりの
目一杯の愛情だから。
終
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