彼女について

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今日は土曜日。 彼女が【カイシャ】というところに行かない日だ。 僕と彼女がゆっくり過ごせる至福の時間。 僕は彼女の膝の上を陣取り、お腹を見せて寝転がる。彼女に対しての僕の信頼。僕のその姿に彼女はほっそりとした白い手を這わせてお腹の辺りをゆるゆると撫でてくれる。 ああ、幸せ。 けれど、 僕がこの幸せな時間を堪能しているというのに突如それは中断される。 ピンポーンと一つ。 嫌な予感だ。 彼女は僕が必死に甘えた視線を送るのに「いい子だね。」と頭をひと撫ですると膝からひょいと下ろし玄関へ向かってしまう。 暫くすると… 「お邪魔しまーす!」 この声。 やっぱり、奴だ。 この世で一番聞きたくない声。 その声は一瞬で僕の幸せな時間をぶち壊す。 彼女との大切な時間を遠慮なく奪う奴。 そう、その声の持ち主は今、僕が最も疎ましく思う存在。 なのにさらに追い打ちを掛けるように僕に絡んでくる。 「おっ?コタロー、元気にしてたか?」 ーーーーお前が来るまではな。 あっ、ちなみにコタローと言うのは僕の名前だ。彼女が呼べばあんなにも甘く響くのにこいつが呼ぶとまるで呪いの呪文のように聞こえるから不思議だ。 「コタロー、おいでおいで。」 ーーー誰が行くか。しつこい。 「コタローって。」 うるさいっ。 奴を120%無視して、僕は彼女の方へタタタッと駆け寄る。 もちろん、かわいく見える様に目一杯、尻尾を振り上目遣いで彼女に訴えかけるんだ。 ーーーねえ、ねえ、僕、こいつ嫌い。 ーーーー早く追い返してよ…… ーーーねぇってば。 彼女の指先をペロリと舐めるも願い虚しく大抵、奴は帰らない。 悪夢の始まりだ。
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