ヤツについて

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いつものように芝生の上にシートを敷いて買っておいたお気に入りのドーナツを嬉しそうに広げる彼女。 今日は新作を食べるんだとかっていつも以上に嬉しそうだ。 僕は彼女の側に寄り添い美味しそうにドーナツを頬張るその姿を見守る。 ああ、何て可愛いんだ。 僕もドーナツになりたいくらいだよと思ってしまう。 なのにそんな時に限ってヤツは勘違いな事を言うんだ。 「おっ?コタロー、お前もドーナツ食いたいのか?」 ーーーいらねーよ。 「しょうがねぇなぁ。ほら、俺のを分けてやる。」 ーーーだから、いらねーって。 「お前、ドーナツ好きだろ?はい、お手!」 うっ……、つい手が出てしまう。 そして、やはりドーナツは美味い。 「もう、タクローくんコタにあんまりあげちゃダメだからね。お砂糖とか沢山入ってるんだから。」 彼女が心配顔で言う。 「これくらい、食ってもどうにもならねぇって。」 ーーーその前にお前をどうにかしてやろうか? そんな、バカな事を言ってる光景が当たり前だと思ってた。 ずっと、ずっとこんな風にみんなで笑って過ごせると思ってたんだ。 あの日まではーーー
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