不安という気持ちについて

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初めてこんなに近くで見たヤツの顔はとても悲しい目をしていた。 「コタロー、いいか?今から俺の言うことをよく聞いて欲しい。実はさーーー」 お前、何言ってんの? 分かんねぇよ。 僕はヤツが話す言葉の意味が分かんなかった。 いや、意味は分かる。ただ、僕が理解をしたくないんだ。 そんなの嘘だって。信じられるかって。 ヤツの、タクローの話では彼女はずっと悪い病気を持っていると言うこと。そして、今日、その病気が悪化して突然倒れてしまった事。 もしかするとーーー このままダメかもしれないと言うこと…… なあ? お前さぁ、ダメってなんだよ? ダメってどういう事だよ? 意味分かんねぇし。 だって彼女はお前の事をアイシテルんだろ? 正直、犬の僕にはイマイチ、『アイシテル』って意味がよくわかんないけれど、彼女があんなにも優しい声で大切そうに言うんだから凄くいい事なんだろ? なのにお前が彼女の事、ダメになるかもとか言ってんじゃねぇよ。 しっかりしろよ。お前がそんなんでどうするよ。 何でそんな悲しい目をするんだよ。 いつもみたいに堂々としてろよ。お前がそんなだとこっちまで調子狂うだろ? ああ、どうしたらこの気持ち伝わるんだろ。どうしたら、ヤツに僕の気持ちがーーー 取り敢えず、目の前にあるコイツの頬を舐めた。 もちろん、そんな事をするのは初めてだ。 だけどそうしたかった。 そうするのが良いと思ったから。 もう一度、頬を舐める。 少し髭が伸びてヤツの頬は痛かったけど、それでも僕は僕の気持ちが届けとタクローの頬を何度も舐めた。
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