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彼女と僕と……そしてヤツとの新しい関係について
目を閉じればそこは真っ暗な世界。
次に目を開けたとき僕はどこにいるんだろうか。
彼女のいない世界で、どこに行けばいいんだろうね。
そんな事をぼんやり考えていた。
もう目を開ける力もない。
このまま眠ってしまうのか?
ずっと、このまま眠って…………
なのにーーー
「コタロー、コタローッ」
おいおい、止めてくれよ。
何で最後の最後にお前の声聞かなきゃいけないんだよ。
コタローコタローって気安く呼びやがって…
力を入れてやっとのことで薄っすら目を開けると
「ほら、水、水飲めって。」
ヤツがいた。
その声に漸く反応できた僕はヤツが差し出した水をひたすら飲んだ。
するとさっきまでもう二度と目を開けることもないって思っていたのに、水を飲みながら僕は次からは水くらい自分で用意できるよう学習しないとな、なんて呑気な事を考えるくらい一気に力が湧いてきた。
ひとしきり水を飲むと、奴は僕をギュッと抱きしめた。
「ごめんな、コタロー。ずっと気になってたんだけどいつどうなってもおかしくない不安定な状態だったから一瞬も離れられなくて………だけど、もう大丈夫だ。心配するな。」
僕は奴の顔をジッと見つめた。
すると、僕が今思った事が通じたのか
「ああ、また彼女に会えるよ。」
と言った。
その言葉を聞いて僕は、奴の頬を舐めた。
髭がザラザラして嫌だったけど、舐める事を止めなかった。
僕なりの、
犬なりの、
目一杯の愛情だ。
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