大切な思い出は永遠に

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 私は俯いていた顔を上げた。一真はゆっくり私の顔に視線を向けた。真に迫った表情は、彼の奏でる音を美しく飾った。 「ありがとう」  視界がぼやけていく。  それだけで充分。私の方こそ、ありがとう。 「もう二度と、交際することはないと誓います」 「……はい」  絞り出した涙声でそう言った。  一真は私に歩み寄り、優しくキスをした。時が止まったような感覚。唇と唇が熱く濡れていく。  目を瞑った私の瞼の裏に甦ってくる大切な思い出は、羽毛が敷き詰められた箱の中にしまわれ、鍵をかけられた。  これを開けることが許されるのは、あなたといる時だけ。あなたと会うこともなくなれば、私は鍵の存在も忘れ、大切な思い出のしまった場所さえ思い出せない。  それでいいの。思い出せなくても、私の唇が、体が、手が、あなたを覚えてくれているから。
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