Marriage Blue(後編)

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***** 「――ぅ、ん……」  眩しい光が瞼を強く刺激する。意識が混濁する中、私はゆっくりと覚醒した。 いつものマットレスとシーツの感触が肌から伝わる中、今、身を預けているのは、マンションの寝室ベッドだとわかった。開いた視界に見慣れた天井や寝具が映る。 (いつの……間に……?)  帰宅した記憶など全く無いというのに、どういう事だろうかと身を起こそうとしたが、酷く軋む体がそれを許さなかった。 「痛っ……」  私はそのまま瞳をそっと閉じ腰の痛みに耐えた。バスローブを身に纏った体を蠢かせて鈍い痛みを徐々に逃がす。そんな中、昨夜一体何が起きたのか、一つ一つ記憶を紡いでいった。 (確か……共同研究の件で会議があって、終わってから藪中に電話して……) 「……あ」  掠れた声を発し鮮明に思い出されたのは、昨夜発情期(ヒート)を迎えた事だった。そしてタイミング悪く久我が訪れた後で、藪中も登場した。  その後の事は正直思い出したくない。何故なら、酷く官能的で激しい発情セックスを研究室で行ってしまったからだ。普通なら有り得ない。神聖な職場で何という破廉恥な事をと――。  しかし、自ら藪中に行為を願い乞うた事も強く覚えている。彼はあの時、発情した私を必死に抑えようとしていた。それでも堪え切れなかったのだ。藪中を押し倒し、体の交わりを強く望んだのだ。  どうやら今は発情は落ち着いているらしい。おそらく、藪中の精をありったけに胎内で受け入れたからであろう。簡単に言えば、このオメガの体は満足したのだ。
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