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「おい、瑞貴。お前もっと食えよ! ほら、カレー分けてやるよ」
「えっ? いらないよ。胃もたれしそう」
「なんだぁ? お前若いんだから、そんな事言うなよ。ほら、まだ口つけてねぇし、食え食え」
神原は小皿を取りカレーを取り分ける。それを瑞貴は渋々受け取ると、そっと蕎麦の隣に置いた。
「高城も食うか? 特盛り過ぎてちょっと多いんだよ」
「結構です。だったら最初から普通盛りにすればよかったのですよ」
神原の申し出を断りながら私は蕎麦を啜ると、瑞貴もウンウンと頷いては小言を呟いた。
「大体、家でも神原さんは食べ過ぎなんだよ! 昨日なんてご飯三杯もお代わりしてさ」
「だってよ、昨日のチキン南蛮美味かったからさ! 瑞貴が料理上手でホント助かるわー」
居候の身を気にしてか、夕食は基本瑞樹が作っているらしい。
基本的に外食やレトルト食が多かった神原だったが、瑞貴と一緒に住むようになってからは、正しい食生活を送っているようだ。
「神原さんがいつも適当過ぎるんだよ! ってかそんなに食べてるとデブになっても知らないからな!」
「大丈夫ですぅ! ジムに通ってますからぁ」
こんな二人を見ているとまるで夫婦にも見え、微笑ましい姿に口許を緩めた時、瑞貴がチラリとこちらを見てきた。
何か尋ねたい事があるようだと悟った私は「何ですか」と問い返す。すると彼は言った。
「あ、いや……さっきから思ってたんだけど、高城さん、もしかして……発情期が近い?」
「えっ……?」
辺りを気遣ってか、瑞貴が前のめりになり、声を小さくしながら尋ねてきたのだ。
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