Marriage Blue(前編)

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「高城君、彼はバイオテクノロジー科学研究所の久我(くが)副所長だ」 「……え? バイオ科学所の?」    バイオテクノロジー科学研究所といえば、その名の通り理研との繋がりも深い。  生物技術で自然科学の世界を中心に研究する国から認可された機関だ。植物や微生物を利用して、エネルギーや食糧、医療などに役立てる技術を日々研究している。  私達の化学は文字通り「ばけ学」だ。異種の元素を混ぜて元のとは全く違う物質を作り出す分野であり、自然界にある物質を人工的に作り出す事を基本としている。その上でバイオ研究所とも密な関係を続けてきた。  世界化学機構の大規模な調査以降、バイオ研究所の方もメスが入ったと聞いた。  理研程、組織体制は刷新されていないが、幹部の顔ぶれも変わったとの情報も入っていた。彼は今回の役員一新で新たに加わったメンバーなのだろう。    それにしてもこの若さで副所長とはと、私は隣に座る久我を見た。すると彼は、先程の表情から一変させ、柔らかな笑みを向け挨拶を交わしてきたのだ。 「こんにちは、高城さん。バイオ研究所の久我修(くがおさむ)と申します。貴方の御活躍は聞いております。素晴らしい角度から様々な研究をなされていて……また、お会いしたいと思っておりました」 「え? ど、どうも、ありがとうございます」  「また」という言葉に引っ掛かりを感じつつも礼を述べると、久我は再び食いつくような視線を送って来たのだ。流石に我慢ならないと私は尋ねる事に決めた。 「あの、久我副所長? さっきから私の顔を驚いたように見ていますが、何か?」  直球な問いだろうが、出会って直ぐに穴が空くほど見つめられるのは気分が悪い。相手がバイオ科学所のお偉いさんであろうが関係無いと、思った事を口にした。  すると彼は思いがけない事を言ってきた。
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