Marriage Blue(前編)

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「あぁ、でも基本は今の研究を優先してね。試行錯誤しながら進めていくし、最終責任は僕が取るから大丈夫」 「一体何の研究をするんです?」 「様々な動物の精子を、とことん追求して調べていくんだよ。実は前から思っていたんだけどさ、人間のみならず動物界や植物界に三種の性が存在していたら面白いなぁって!」 「お、面白いって……」  どうやら宮本センター長お得意の好奇心が疼いているようで、その顔は輝きに満ちていた。相変わらず無精髭だらけで寝癖大爆発ではあるが、センター長に就任してから各界との付き合いも多い。好きな研究の現場になかなか携わる事が出来ないと嘆いただけに、私としても、今の彼の楽しそうな表情には何かホッとするものがあった。 「で、バイオ科学所の方にも是非協力して欲しくて提案したら、案外すんなりOKしてくれてね。今日は所長の代わりに久我副所長が挨拶に来てくれたってわけ。ちなみに彼がバイオ科学所側の中心者だから」  宮本センター長は鼻歌交じりに机上に置かれていた資料を捲り始める。どうやら今回の共同研究の内容が記載されているようだ。 「宮本センター長、でも中心者だなんて、そんな重責私は……」 「大丈夫、大丈夫! 全然急がない研究だし息抜き程度にしてよ。それに、精子を専門に調べる君の知識は必要だって事も分かって欲しい」 「確かに実験そのものには興味もありますし、面白そうですけど……今、研究や論文が立て込んでいて、それに……」  藪中の顔がふと過った。これ以上忙しい身になると、例え結婚しても、すれ違いが生じるのではないかと不安が駆けた。
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