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あの後、共同計画の件で夕方まで打ち合わせが続き、研究室に戻ったのは午後五時を過ぎていた。
三者様々、面白い意見が飛び交う中、宮本センター長とも久し振りに研究の事で語り合えたと、私は充足感を得ていた。
今は、夕日が差し込む室内で副室長が用意してくれた冷たいコーヒーを飲みながら、酷使した目と脳を休ませる為にソファに凭れ座っていた。
有意義且つ楽しい時間だっただけに、やはり自分は研究が好きなのだと強く感じ入る。
久我もアルファなだけあって、なかなかの洞察力と知力を持っていると話合う中でわかった。
「再会」と言ったら少し語弊があるかもしれないが、彼から学ぶ事も大きいと実感した。
ファイリングされた資料を捲りながら、これから楽しくなりそうだと心躍る。仕事が増える事には変わりないが、任された仕事は全力で遣り遂げたいと思う。
それに、様々な分野で結果を残せたら、藪中の名にも恥じない自分になれるとも思った。別にそれだけの為に研究をしているわけではないが、オメガである自分が世間から認めてもらうにはこの道しか無い。
三種平等への道は確かに開かれつつあるが、まだ始まったばかりだ。だからこそ自分がその先駆者にもなりたいとも思っている。
(まぁ、考える事だけは大きいですけどね)
志だけは立派だと自ら失笑したが、それも自由だと、ひとりで納得しながらコーヒーを一口二口飲み進めていた時だ。室内にノック音が響いた。
「あ、俺出ます」
直ぐに副室長の男が仕事の手を止め対応する。彼はまだ若いが、よく働き動いてくれているので、本当に助かっていると視線を配らせながら開いた扉の先を見る。
「――すみません。高城さんいますか?」
副室長が招き入れ入室してきたのは、先程まで綿密な打ち合わせをしていたアルファの男、久我だった。
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