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「久我副所長、どうされました?」
私は姿勢を正しソファから立ち上がると、彼に歩み寄った。
距離を詰めた事で初めて気が付いたのは、彼の身長は藪中と然程変わりない事だった。
「どうしたって言うか、いや、折角の機会だし、今夜飲みでもって思って……」
「はい?……何故です?」
プライベートに誘う理由が全くわからないと、久我を見上げると、彼に困ったように笑われた。
「何故って言われても、研究の事とか色々話したいなぁって……暫くは共同研究でやり取りも増えるだろうし。まずは中心者同士、親睦を深めれたら研究結果も素晴らしいものになるんじゃないかなぁって思って」
「……なるほど」
彼の言う事も一理あると頷く中、口調が先程より砕けている事がわかった。特に気にはならないが、こちらが彼本来の姿なのだろう。
それに、バイオ科学所で副所長を務める久我の話は、もっと沢山聞いてみたいところもあった。
しかし相手はアルファだ。つい身構えてしまったところで、久我は確信を突くように告げてきた。
「あ、心配しなくても、番持ちのオメガには手を出さないから安心して。それに俺、恋人いるから」
「なっ……!」
ストレートな物言いに、まるで自惚れていた事を指摘されたようで、若干恥ずかしさが込み上げた。
「どうする?……行く? これから一緒に研究を進めるにあたっては有益になると思うけど」
「そうかもしれませんけど……」
返事を濁す私に更に久我が言う。
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