Marriage Blue(前編)

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「それとも、俺がアルファってだけで避ける? 宮本センター長はそんな事決して望んでないと思うし、アルファとオメガだからといって、元々変な事が起きる可能性があるなら高城さんを中心者に指名なんてしないでしょう? それに俺だって研究について聞きたい事もあるし……」  その意見もごもっともだと、ゆっくり頷いた。  宮本センター長は、私の能力を最大限に引き出そうとしてくれている。今回の共同研究は自身のレベルアップにも繋がるだろう。 「高城さん、どうする?」 「……いいでしょう。けれど、二時間の時間厳守でお願いします。それが限界です」  とは言え、やはり最低限の警戒心は持つべきだと感じ、私はあえて制限時間を指定した。久我はそれを快諾し大きく頷くとスラックスのポケットからスマートフォンを取り出した。 「OK、二時間ね。じゃあ店は予約しておくから、夜の七時半現地集合で構わない? それとも車出そうか?」  スマートフォンを操作しながら、彼はネット予約を入れつつ尋ねてきた。 「いえ、結構です。ちゃんと送迎して下さる方がいますので」 「へぇ! 流石、藪中家の花嫁だ」 「……そういう言い方やめて下さい」  大袈裟な言いぶりに私は眉をピクリを動かしながら不機嫌を露わにする。  これが久我の、皮肉なのか揶揄(からか)いなのか本心は分からないが、表情からして悪気は無いようだと解釈する。 (まぁ、たった二時間ですし……大丈夫でしょう)  私の日頃の行動は、西野からアメリカに滞在している藪中に伝わる。それが少し気掛かりではあったが、彼には共同研究の話をちゃんと伝えれば、全てわかってくれるだろうと、私は久我の誘いを受ける事にしたのだった――。
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