4908人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
久我が予約を入れた店は、藪中と住むマンションから車で十五分程の離れた場所に位置する洒落たバーで、繁華街から少し離れたビルの隙間にあった。
「――じゃあ、再会を祝して乾杯、お疲れ様」
「はい、お疲れ様です」
カウンター席の一番奥に並び座りながら挨拶を交わす。
ギムレットの入ったカクテルグラスを久我は軽く掲げた後、一口含み飲んだ。同じ動作で私はダイキリの入ったグラスを口へと運ぶと、ラム・ベースの爽やかな味が広がった。
隠れ家的でクラシックモダンな雰囲気の薄暗い店内は、ダークブラウン色をメインとしたカウンターが設置され、グレーのソファ生地の席が上品さを誘う。まさに大人の為に用意された空間だとわかる。
カウンター奥の棚に並べられたアルコール類も、まるでひとつのインテリアのように配置されていた。
狭くもなければ広くも無い店内は、程良い心地好さを与えてくれ、私と久我以外には、あと数組ほどのカップルがいた。どの客層も落ち着いた身形の紳士淑女達で、ここなら雑音など気にもせず、アルコールの味を楽しめるだろうと、今度藪中と一緒に来てもいい。そう思う自分がいた。
「中々お洒落なバーでしょう? たまに独りで飲みに来るんだ」
「へぇ、そうですか……」
返事をしながら隣に座る久我を横目で見た。藪中程ではないが確かにアルファとしてのオーラはある。
最初のコメントを投稿しよう!