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「ははっ、素直じゃないんだ。でも、本当に吃驚した……」
久我が溜息と共に呟いた。一体何に吃驚したのだと横目で彼を見る。
「高城さんの活躍は、ここ最近有名だったし、再会出来たのも嬉しかったけど、何よりオメガだったって事が一番驚いたかも」
「…………」
彼からしたら全く悪気は無いのだろうが、オメガと言われつい黙ってしまった。すると久我は、慌てた様子で弁明してきた。
「あ、ごめん。変な意味じゃ無くて、普通に吃驚したってだけで……」
確かについ最近までベータと偽り生きてきただけに、私をオメガだと知った理研の人間も皆、吃驚仰天していた。
「オメガだって事は大学時代からずっと隠してたの?」
久我なりの素朴な疑問なのだろう。私は頭の中で言葉を選び、今までの自分を振り返りながらその問いに答える事にした。
「隠していたというか、私の場合特殊なのか発情期を迎えたのは今年の話でして……」
「へぇ、そんな事ってあるんだ」
瞳を何度か瞬きした彼は私を熱心に見つめてきた。その瞳に変な居心地の悪さを覚え、私は本題を切り出した。
「……で、質問って何ですか? 出来れば端的にお願いします。残り時間はあと一時間半です」
「あぁ、ごめん。質問とか嘘」
「はっ?――……っ!」
久我の発言に対して眉を顰めながら彼の方を向くと、思いの外、視線が近くで重なり合った。
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