4910人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも親睦を深めたいのは本当だから。それに、共同研究は、何が何でもいい結果を残したいと思ってる。高城さんもそうじゃない?」
重なった視線を、ゆっくりと外した久我が問う。
「そりゃあ勿論、やるからには全力を尽くしますし、面白そうな研究だと思ってますけど……」
「だったら仲良くしてくれたら嬉しい。これから色々協力し合うんだし、とにかく今日はそのお近づきの印って事で……」
微笑みギムレットを飲み干した久我は、マスターに新たにアルコールを作ってもらうように声をかけた。
「それに、来月結婚するんだし、ささやかな御祝いとしてここは俺に奢らせてよ」
「えっ、そんな結構です」
片手を小さく振りその申し出を断ったが、久我は引き下がらず結局今夜の支払いは彼持ちという事で決定した。
「でも凄いと思うよ。オメガだと言っても、アルファと番うのは勇気いったんじゃない? それに、男同士だし」
「勇気も何も、彼とは運命でしたから……」
藪中との出会いを思い出す。それはまだ今年一月の話で、彼に出会った瞬間、全ての細胞が反応していた。嫌悪だと言いながらも、運命の番に出会えた歓びをこの全身で、魂で感じていたのだ。
「運命の番ねぇ……都市伝説的な話だと思ってたけど、本当にあるんだ」
感心したように呟いた久我は、マスターが新たに作ったマティーニを口にした。
最初のコメントを投稿しよう!