Marriage Blue(中編)

3/33
4888人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
「……一体どういう事です? 人の婚約者と、こんなに親密に飲み交わして。しかも貴方、アルファですよね?」  藪中は私を強く抱いたまま、久我に向かい淡々と言い放った。まるで静かな怒りがそこに潜んでいるかのような口調に三者の間に緊張が走る。  もしかしたら変な誤解をしているかもしれないと、藪中にちゃんと説明しようと顔を上げた時、何処か小馬鹿にしたような鼻で笑う声がカウンター席から聞こえてきた。 「まぁまぁ、そんなに怒らないで下さいよ。藪中グループの御曹司様」  勿論、それは久我であり、彼は座ったままクツクツ笑いながら藪中を見上げていた。 「怒ってないです。俺は理由を聞いているんです。それに、貴方誰ですか? こちらは全く存知上げておりませんが?」  藪中も藪中で挑戦的な態度で応戦する。アルファ同士の威圧感に一瞬気圧される中、二人のやり取りが始まった。 「あぁ、それは失礼しました。(わたくし)こういう者です」  久我が徐に立ち上がると、スーツジャケットの内側から名刺入れを取り出し藪中に手渡す。  藪中は私の体をそっと離すと、久我の名刺を受け取った。そして彼も久我に向かい自分の名刺を差し出した。 「……なるほどバイオ研究所の副所長さんですか」  小さく頷きながら、藪中はどこか鋭利な目付きで、久我の姿を足のつま先から頭の天辺まで観察するように視線を辿わせていた。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!