Marriage Blue(後編)

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  予定より早く帰国した藪中が、久我と飲み交わしているバーに突然現れ、帰宅後激しい口論になった事は、私にとって、まさかの展開であった。  そのまま激情に身を焦がした藪中は、それはもう激しく私を抱いた。私自身も最初は戸惑いを隠せなかったが、最終的には自ら欲しいと淫らに願った。  あれから何度、精の迸りを胎内に受け入れただろうか。正直なところ全然覚えていない。何度目かわからなくなったところで、私の意識は完全にシャットダウンしたからだ。  気が付くと翌朝を迎え、時刻は午前十時を指していた。強い夏の日差しが窓から差し込んだ室内は、程良い空調で温度が保たれており不快な目覚めでは無かった。  しかし、ベッドの隣には藪中の姿は無く、何も身に付けていない私の体は、ちゃんと清められていた。彼が後始末をしてくれたのだと知る中、今日が休みで良かったと鈍い腰の痛みに耐えながら身を起こした。そして、クローゼットからガウンを取り出し羽織る直前、鏡に映った自分の体を見て絶句する羽目となる。  何故なら、首筋、胸、二の腕や脇、お腹や際どい脚のライン、体中の至る所に大量の鬱血痕があったからだ。  昨夜の藪中は、まるで感情を爆発させた飢えた獣のようだった。恐怖を感じつつも、彼になら全て食べ尽くされていいと思った。心がすれ違ったままの性交に当惑はしたが、藪中はちゃんと愛してると、いつものように伝えてくれ、私もそれに応えた。
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