プロローグ

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 マウスたちは遺伝子操作により、人間と同じようにα、β、Ωの性が与えられている。該当するひとつのケージにはαとΩのマウスが一緒に生活しており、人工的にΩマウスはヒート状態にしてある。  ヒートのΩとαが同じ空間にいて、することはひとつ。セックスだ。子作りだ。交尾だ。  だというのに、ケージの中のマウスたちは飼料を分け合ったり、毛づくろいをしたりと仲睦まじいばかりで、一向にその気配がない。それでは困るのだ。なんといっても俺の論文テーマは『第二の性における多様遺伝子交配』なのだから、自然な遺伝子交配――つまり交尾を通して子世代を成してもらわないと、研究が進まない。  こんな話をすると同じ業界の者以外は首を傾げるが、早い話が『αとΩはお互いのどこに惹かれあうのか』という疑問を解き明かすのが本論文の狙いだ。
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