怒涛の朝

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 迷惑をかけたし、見たところ悪い奴でもない。なにより一人でいることを、俺は寂しく思っていた。  いや、この時ははっきりとした形でその感情はなかった。どこか不安定なものとしてそれは、もやもやとしていた。 「置いてくれたら、俺なんでもするよ。料理も、洗濯も、掃除もさ。だから、傍に置いてくれない?」 「……しばらくの間だけ。身の振りを考えるまでだぞ」  たっぷりと考えて出た言葉に、俺自身もかなり驚いた。けれど、出たものは引っ込まない。何より目の前のこいつが、途端に嬉しそうな笑顔を向けたのを見てしまっては。  その時、突然と携帯がけたたましい音を立てた。時間を見て焦ったが、もう仕事に出る気分じゃない。俺は溜息をついて、電話に出た。 『もしもし、オーナー。どうなさいました?』 「あぁ、すまない。具合が優れないんだ。悪いが、今日は休ませてもらう」 『それは構いませんが。大丈夫ですか?』 「あぁ。そちらは任せる。九龍にも、よろしく言ってくれ」  心配性な秘書の電話を切り、俺は一息つく。  とにかく怒涛の朝だ。頭の中はまだ軽いパニック状態だし、胃は微妙に気持ち悪い。最悪なのはそれでも、記憶が消えないということだ。
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