174人が本棚に入れています
本棚に追加
とにかく服をどうにかして、俺は遼と出かけた。
下着やシャツ、ズボンも三本。
意外と遠慮深いらしく、「そんなにいらない」と言っていたが俺が押し切った。だいいち、洗濯するとは言えシャツ二枚にズボン一本でどう生活するんだ。
買い物を終えて外に出てくると、世はすっかりクリスマスモードだ。
「あと一カ月くらいで、クリスマスなんだね」
「あぁ」
俺としては、祝う気分じゃない。日本のクリスマスは恋人同士の特別な夜というのがお決まりで、あっちもこっちもカップルが多い。それを見るたび、俺の胸は痛む。
「あっ、クリスマスケーキ!」
ケーキ屋の前で足を止めた遼は、展示用のケーキに目を輝かせる。子供みたいな奴で、行動が突飛だ。仕方なく俺も足を止めると、キラキラした目で俺を見た。
「あのさ、クリスマスになったら俺がケーキ作っていい?」
「ん?」
それは…俺と一緒にクリスマスを過ごすということか?
「俺は…」
「美味いの作るよ。信じてって!」
味の問題じゃない。そもそもクリスマスはそれなりに忙しい。
だが、ケーキを見て子供みたいにはしゃぐこいつに言う事もないと、俺は黙った。それに、ちょっとだけ笑ってもいた。
最初のコメントを投稿しよう!