お散歩

5/5
前へ
/99ページ
次へ
「寒いから、さっさと帰るぞ」 「ご飯は? 冷蔵庫の中、本当に何もなかったけど」 「カップ麺」 「はぁ?」  俺の食生活は、それは酷いものだ。外食か、弁当か、カップ麺。  勿論それを美味いと思って食べているわけじゃない。美味い料理がどういうものかは、知っているつもりだ。  けれど一人暮らしでは作るのが面倒くさい。だからさぼっている。  けれど遼の奴は呆れたと言わんばかりの顔をしている。そして、俺の手を引いてスーパーに駆けこんだ。 「俺がいるんだから作る。祐二さん顔色よくないと思ったけど、食生活悪いでしょ」 「ほっとけ」 「食べるのは基本なの! バランス悪い食生活してたり、偏ったりすると本当に体に悪いんだから。病気になるよ」  お節介なまでに言うこいつを、俺は面倒と感じつつも嫌いではなかった。よくよく思えば、こんな風に言ってくれる奴は今までいなかった。 「手っ取り早く、今日はキーマカレーなんてどうかな? 野菜も入ってるし、調理時間も短いし。ご飯はまだあったから、茄子とトマトとひき肉と…」  独り言みたいに言う遼の後を、俺はついていく。裏をひっくり返したり、あれやこれやと楽しそうだ。パンや飲み物も買って、お会計。俺はやっと家に戻ってきた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加