174人が本棚に入れています
本棚に追加
同居初夜
疲れてソファーに座り込むと、遼はせっせと夕飯の準備。感心する。
台所に立つ自分よりでかい男を、俺はぼんやり見ていた。皮肉にも、これが俺の理想の風景だった。
仕事を終えて戻ってくると、電気がついていて、お帰りを言ってくれる人がいる。
テーブルにはもう食事の準備ができていて、一緒に食事をする。俺の願いは本当に、そんなことだった。
「どうして前の男は、お前を捨てたんだろうな」
俺の独り言を、遼はちゃんと聞いていて顔を上げる。そして、目を丸くして言った。
「女の人ができて、結婚するから」
いや、そういう意味で言ったんじゃないんだが。
「捨てるのは勿体ないとか、思わなかったのかってことだ」
「どうだろう? あの人、生活がけっこう派手でね、俺の世話なんて必要なかったんじゃないかって思うんだ」
どうやらこいつは、どんな相手にもこうした世話を焼いているようだ。俺はそれに感謝するかもしれないが、そうじゃない奴だっているのか。
遼は料理の手を休めないまま、俺に前の男の話をした。
最初のコメントを投稿しよう!