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「知り合ったばかりの人の家で、悪いと思ったんだけどさ。一張羅だから、あのままじゃどこにも行けなくて。洗濯機、借りちゃったんだけど」
「あぁ、それは…。悪かった」
一張羅? こいつ、そういえば何も持っていなかった。
「俺、高本遼。お兄さんは?」
「浅井祐二だ」
「祐二さんか。気分、どう? まだ辛い?」
ちょっと、なんというか、俺は戸惑う事が多い。
ゆきすぎと言ったら言葉は悪いが、会ったばかりでこんなに心配してくれる奴がいるのか?
もしかして、手の悪い泥棒とか…。
とにかく、深く関わる前に何とかしないと。俺は思って身を引いた。
すると遼はちょっと悲しそうな、寂しそうな顔をする。その顔は、悪い事をしていないのに胸に刺さった。
「昨日の事は、悪かった。服が乾いたら…」
「あっ、あのね!」
遼は俺から「出て行ってくれ」と言う前に口を挟んだ。そのまま続ければいいのに、俺はなんでかここで言葉を切ってしまった。
何より遼の目が、必死だった。
「祐二さん、実は俺、住む家がないんだ。なんでもする! だから、俺の事飼ってくれない?」
「……はぁ?」
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