怒涛の朝

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「働かないのか?」 「働き口があるなら、働くんだけど。ちょっと事情があってさ」 「なんだ?」 「俺、十八でまだ未成年なんだ。それに、住所不定で面接通らないし」  …十八? 「お前…未成年なのか?」 「そうだよ」 「高校、とか…」 「中退。色々あって、家がないんだ」  馬鹿な話だと思う。けれど、こいつの目は本気だ。仕事柄、真剣に話をする相手の目は分かる。こいつは嘘を言っていない。  それにしても、十八だったなんて。体格といい、雰囲気といい、二十歳は過ぎていると思っていた。最近の子供は育ちがいいとは聞いているが、本当なんだな。  綺麗な筋肉のついた体は、俺に比べるとでかい。胸板もなにも、俺とは比べ物にならない。  俺は、貧弱とまでは言わないが細くて薄い。色は白くて、男らしい部分があまりないと、自分でも思う。 「家がないって、どういうことだ?」 「一年くらい前かな。強盗が入って、放火されたんだ。両親はそれで死んで。俺はクラブの遠征でいなかったから助かったけど、帰ってきたら家も親もいなくなってた」
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