怒涛の朝

5/7
前へ
/99ページ
次へ
 馬鹿な…そんなドラマみたいな話をそっくり信じろと言うのか?  けれど、最近物騒な話は多い。放火に殺人。理由は稚拙で、信じられないものばかりだ。たかが数万円の為に一生を無駄にする奴等もいる。  それを思えば、こいつの言っている事も本当かもしれない。 「嘘だと思うなら、当時の新聞見てよ。記事載ってるから。なんなら家の跡に連れて行ってもいいよ。空き地になってるけど」 「いや、いい。だがそうなると、お前は未成年だろ。親戚とか、面倒を見てくれる人はいないのか?」  途端、凄く嫌な顔をした。よっぽど嫌な思いでもしたのか。俺は言ってはいけない事を言ったようだ。 「親戚はいるけど、みんな厄介払いみたいにたらいまわしで。嫌気がさしてぐれて、街で転がってた時に声かけられたの。それで、ヒモ」  サバサバと、ちょっと壮絶な身の上話をするこいつを俺はこの時半信半疑だった。  けれど、多分独り身になって俺自身が弱ってた。なにより、こいつの気持ちが全く分からないわけじゃなかった。傍にあったと思ったものが、突然なくなったのだから。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加