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彼女の横に初老の男性が立っていた。おそらく彼女の父親だろう。父親は彼女と同じようにダッフルの頭に手を置いて頭を撫でた。わしゃわしゃと少々荒く、彼女と違い大きくごつごつとした掌だったが、そこからはちゃんと彼女と同じように優しさが伝わってきた。
「安心しろ。ここがお前の新しいお家だ」
なんて言っているのかは分からなかった。
でももう、安心していいんだという事は、なんとなく分かった。
*
「色々よくしてもらったよ。普段の世話はもちろん、車で遠くに連れて行ってくれたりもしたしな。これが家族かって感じだった」
僕達もコロと一緒に小旅行に行ったりした。普段と違う景色を見て、コロはどう思っていただろう。楽しそうにしているように見えたが、ダッフルの話を聞いてコロもちゃんと楽しんでくれていたんだろうとなと少し安心した。
「このあたりもよく一緒に散歩したよ」
「え?」
その瞬間ズキっと頭に少し痛みが走った。
「そうなの? じゃあひょっとして僕ら――」
「かもな」
僕とダッフルはどこかで会っているかもしれない。でも僕はダッフルの事を思い出せない。コロと散歩していてパグと散歩している女性とも会った記憶はどうにもない。
「改めて考えると不思議な関係だよな。言葉は通じないけど共存してるって」
「そうだね。伝わってるか分からないから、一方通行になってる事も多かったかもしれないけど、ダッフルの話を聞いてると、案外分かり合えてたのかもなってちょっと安心した」
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