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 ダッフルの最初の飼い主は若い夫婦だった。僕ら人間なら一目見ただけで関わりたくないようなチャラついた見た目と、見た目通りの無責任で怠惰な生活を送る二人のもとに、ダッフルは飼われていた。何故そんな事になってしまったのかは分からない。それこそ物心がついた頃から、ダッフルにとっての居場所はそこだった。  食事は残飯で、ちゃんとしたドッグフードなんてものはほとんどもらえる事はなかった。散歩なんてもってのほかで、自分の存在に構ってもらえる事なんてまるでなかった。  でも、それはまだ後に捨てられる事を考えればましな方だった。 「ねえ。かわいくないからもういらない」  そう言ったのは女の方だった。 「だな」  彼らの言葉の意味は当時分からなかった。今になってそういった言葉だったのだという事が分かった。ダッフルの気持ちやら命を考えるだけの心も頭も彼らにはなかった。そんな簡単なやり取りだけで、ダッフルは家を追い出されたのだ。  車に乗せられ、どことも分からない土地に、放り投げるように捨てられた。そして何の後悔も未練もみせずに車は走り去って行った。  ダッフルは茫然と車のテールランプを見つめた。  恵まれた環境ではなかった。それでも、例え残飯でも空腹を満たす事は出来た。  一瞬にして何もかもがなくなった。もはや彼らを恨む気持ちもなかった。もともとまともな人間には見えなかったし、同じ空間にいる中でろくでもない輩だという事は重々承知していた。しかしここまでとは思っていなかった。恨むよりも、呆れに近い気持ちだった。     
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