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すぐ上の階層は、遊興区画と土産物売場区画のようで、進んでいくと、土産物区画が終わった辺りに総合案内所があった。
クランは人が並んでいる総合案内所に並ぶと、時刻表と船内案内図を受け取り、近くにあった棚から紙を2枚抜き出した。
それから、すぐ横の椅子に座る。
ユリアラがすぐ側に立っていると、少し笑って、落ち着かないから座ってくれ、と言った。
ユリアラはクランの隣に座って、荷物を持ったまま横に置いた。
「これによれば、チェザ港まで1時間、乗降に1時間かかって、15時にハルト港に着くらしい。ハルト港で降りるから、準備しておいてくれ」
「承知しました」
「そのあと、ハルト港で1泊してから、ムーリエに向かう。ムーリエで2泊して、戻るから、おそらく4泊だ」
「はい」
返事をしながら頷くと、クランも頷きを返し、今度は船内案内図を眺めた。
ユリアラは、見るともなしにその手元を覗いていた。
それによれば、現在いるのは船上2階であるらしく、船倉には宿泊設備があるようだった。
船上とは、船の一番長い甲板を基準にしているらしく、その階層が船上1階、すぐ下が船倉1階となっていた。
「少し船上3階を覗いてみよう」
そう言ってクランが立ち上がるのに合わせて、ユリアラも立ち上がった。
クランの後を付いて船上3階にあがると、ちらりと喫茶室と食事室を覗く。
ほかに、酒宴室、遊戯室とあったが、いずれも、出入り口に置いてある看板によれば、料金が高い。
クランならば余裕で入れるのかな、とユリアラは思った。
船首にある展望室まで覗くと、クランが食堂に行こうと言った。
そうして、3階の食事室に入っていく。
ユリアラは出入り口でためらったが、昼食は少し高いなと思う程度だ。
こんな機会は二度とないだろう。
ユリアラは意を決して食事室に足を踏み入れた。
クランは窓際の席に座り、ユリアラは正面の席に座った。
水を置いた女給が、注文がお決まりになりましたらお呼びくださいと言って去る。
「昼は3種類しかないんだな。ユリアラはどれにする?」
「ポロポロ鳥にします」
一番安い。
クランは顔をあげて女給を呼んだ。
「ポロポロ鳥とモルモル肉を頼む」
「かしこまりました」
女給が去ると、クランは窓の外を眺めた。
ユリアラもつられて窓の外を見て、西連峰の威容に息を呑んだ。
「すごいな、こうなっていたのか」
「クラン様は…」
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