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「さあ。香辛料はサールーン産のものが多いです。カザフィス産の調味料で興味深いのはミショウでしょうか」
「ミショウ?」
「はい。独特の味がして、臭み消しになっています。でも、アルシュファイドでは一般的ではないですね。カザフィス料理店でよく使われてて、煮込みや汁に使われています。生の野菜につけても美味しいですよ」
クランは少し目を大きくした。
「そんなこと、どこで知るんだ?」
「え、ただ出されたものを食べているだけです。それで調味料を知って、自宅で作るんです。調味料の豊富な店があるので、食べに行く以外だと、調味料にお金をかけてますね」
「調味料はカザフィス産のものが入るのか?」
「食べ物はカザフィス産のもの、多いですよ。すぐそこですし」
「特に多いのはなんだ?」
「やっぱり豆茶ですね。私には味の違いはよく判りませんが、産地によって味が違うようです」
「すでに仕入れている者もいるのか…」
ユリアラは首を傾げた。
「でもそれ以外でカザフィスのものってあまり見掛けません。私が見るのは主に小物類ですが、高いわりにこれといった意匠のものがないです。まあ私の趣味ですが」
「ユリアラの趣味?」
「華美でないものです。その点、ハドゥガンタのものは精緻で感心はするんですけど、装飾が多くて好みではないです」
「カザフィスのものは?」
「花の意匠が多いですね。私の場合、問題は、箱の大きさとか、使い勝手の良さとかなんです。それに値段が見合わないなと思うので、求めるのは主にアルシュファイドのものになります」
「値段が見合えば求めるか?」
「そうですね。意匠は嫌いじゃないんですよ。むしろ素朴で好きな方ですから、まあ、今ほしいのは調味料入れなんですけど、ちょうどいいのがあれば求めます」
それからふと、ユリアラは気になった。
「何を仕入れるおつもりなんです?」
「ん?まだ決めていないが、気になるものがあるか?」
「私は買わないんですけど、カザフィスの布に注目してます。すごく高いんですけどね。すごく薄くて、肌触りがよくて、感心しているんです」
「それなのに買わないのか?」
「布に興味があるのは母なんです。付き合いで布屋に行っていて、なんとなくいろんな布見てるだけなんですけど、どうせ仕入れるなら特色のあるものは何かなって考えただけです」
「特色か…」
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