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最初の町
クランとユリアラの荷物は小さなものだった。
それを持って、まばらになった人の波に流されるように、大多数の者が向かう方向へと歩いた。
すると、大きな通りが見えてきて、人々は立ち止まって、地図を見ながら右手側を指す者と左手側を指す者とに分かれ、流れていく。
クランはユリアラに右手側を示すと、あちらに行くぞと言った。
クランのあとを小走りで追っていくと、左に折れ、立ち止まった。
その前には、宿街があり、クランはどこの宿に入ろうか迷っているようだった。
取り敢えず歩き出し、左右を見ながら、やがて一軒の宿の前に立ち止まった。
そこは立派な構えで、なかに入ると、クランは宿代を聞いた。
「はい、お1人様用ひと部屋で8,000ディナリとなっております。朝食が付きます。お2人様ひと部屋ならば14,000ディナリです」
「そうか、ありがとう」
クランは外に出て、ユリアラもあとに続いた。
それからクランは、2、3軒回って、朝食付きで1人6,000ディナリの宿を見付けた。
約束通り、宿代はクランが払ってくれ、ユリアラは渡された鍵を持って2階に上がった。
部屋に振られた番号を確認しながら自分の部屋を探し、見付けてなかに入る。
部屋は細い木で作られたもので、窓を開けると、すぐ下には中庭があった。
そこまで見ると、ユリアラは窓を閉め、着替えの入った鞄を寝台の脇に置いて、小さな方の手提げ鞄を持って階下におりた。
すると外に出て行くクランを発見して、あとを追う。
クランはすぐに気付いて、付いてきたのかと言った。
「取り敢えずご用があったときのために控えます」
「危険かもしれないぞ」
「では、危険に近寄らないようにしてください。それが私の務めです」
クランは目を瞬いて、それから少し笑った。
「なるほど、効果的だ」
そう言って、こっちだ、と言った。
「ハルトの街には3本の大きな通りがあってな、東が土産物街、中央が仕入れ街、西が宿街になっているようなのだ。ここに入るぞ」
クランはすぐ手前の店に入った。
そこは布屋で、様々な色の布が置いてあった。
クランは店内の品揃えをざっと眺め、店主に聞いた。
「ここの布はよその国から仕入れたものか」
「ええ、そうですよ。カザフィスで織った布なら隣の隣です」
「そうか、ありがとう」
そう言ってクランは店を出たので、ユリアラも後を追った。
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