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それから、出るか、と言って店を出た。
隣の店は糸屋らしく、入ってみると様々な糸が並んでいた。
「店主、ここのものはカザフィスのものか」
「いいえ、マカラン国からの品ですよ。これを織るんです」
「マカラン国というとシャスティマ連邦か」
「ええ、そうです」
クランは頷いて、少し店内を見ると外に出た。
「ほかにないかな。カザフィスらしいものが」
クランが呟き、ユリアラは首を傾げる。
「やっぱり豆茶じゃないですか」
「食品以外がいいんだ」
「じゃあ服とかですか。土産物街に行った方がありそうです」
「そうだなあ…素材が何か欲しかったんだが…」
「食品から運んで、段々別のものも増やしていったらどうでしょう。そしたらいい荷持ちにも会えるかもしれません」
「うーん、そうか。それもありか…」
言いながら、クランは隣の店に入った。
そこは皮革屋で、主にラヌマの皮革を扱っているらしい。
「ラヌマとはなんだ?」
クランが聞くと、店主は小さな動物です、と言った。
「両手で抱え込めるぐらいの動物で地面に穴を掘ります」
「それはカザフィス独特の動物か」
「そう思います。他では聞いたことありません」
そう聞くと、クランは店内のものをじっくり見た。
ユリアラも見てみて、触り、馬やヤッカとの違いを知った。
光沢が薄く、柔軟なのだ。
クランは店主に聞いた。
「ここの品物はアルシュファイドに輸出しているか?」
「いいえ。ハドゥガンタの者しか来ません」
「ラヌマの革のいいところはなんだ」
「やはり柔軟なところでしょうか。靴にすると履き心地がいい。あまり丈夫でもないんですがね。大事に扱えばよく足に馴染みます」
「靴か…靴屋はこの通りにあるか」
「2軒先にありますよ」
クランは、ありがとうと言って店を出た。
辺りは夕暮れで、その薄暗さに、アルシュファイドとはずいぶん違うな、とユリアラは思った。
アルシュファイドならこの時間には、街灯が点いている。
クランが2軒先の店に入って、ユリアラは慌てて後を追った。
そこでは靴を扱っており、クランは品物を確かめ、店主に、アルシュファイドに輸出しているかと聞いた。
「いいえ、アルシュファイドの客は仕入れません。途中でひどい目に遭うと知っているからでしょう」
苦々しげに言う。
「そうか…いい荷持ちを知らないか」
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