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「さあ、ヤラカン親子はよく耳にしますけど、取引がないのでよく知りません」
「なるほど」
クランはそう聞いて、店を出た。
辺りはすっかり暗くなっている。
ユリアラを振り返って言った。
「宿に帰ろう」
ユリアラは頷いて、2人は元来た道を戻り、宿に入った。
18時頃で、夕食には少し早いが、クランは食事にしようと言って宿の食堂に向かった。
食堂はすでに人が多く、クランとユリアラは空いている席を見付けて座った。
するとすぐに女給が来て、注文はと聞く。
「定番料理を頼む」
「定番というとラヌマの煮込みですが、お客さんたち、臭みは大丈夫かねえ」
「取り敢えず持って来てくれ」
「分かりました」
そう言って女給は厨房に声を掛けに行った。
「どうだった、ユリアラ。初めてのカザフィスは」
「新鮮です。道がすぐ暗くなるのが少し怖いです」
「ああ、そうだな」
「それにあんな石作りの品物があるなんて知りませんでした。仕事が繊細なんですね」
「うん、確かに」
そう話していると、ラヌマの煮込み料理とプノムが来た。
プノムはアルシュファイドでもよく食べられる塊茎だ。
早速取り分け皿にラヌマを載せて食べてみると、確かに独特の臭みがある。
よく煮込んであるため、肉は軟らかい。
「どうだ?」
クランに聞かれて、ユリアラは答えた。
「もう少し臭み取りをしてほしいですが…まあ食べられます」
「たしかに。すごくうまいということはないが、臭みに慣れるとこんな料理もいいな」
そのあともいくつか注文し、満足したふたりは明日の時間の確認をして、別れて部屋に戻った。
寝台は寝心地がいいとは言えなかったが、疲れていたのか、ユリアラはぐっすりと眠った。
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