ムーリエ

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ムーリエ

       ―Ⅰ― 次の朝、食堂で顔を合わせたふたりは挨拶を交わし、フアナという植物を焼いたものと根菜類の多い汁物をいただいた。 「今日はムーリエに行く。宿の者に聞いたら、馬車屋が街の外れにあるらしい。行ってみよう」 「はい」 そう話して、ふたりは荷物を持って宿の玄関広間で再び顔を合わせた。 「じゃあ行くぞ」 「はい」 歩き始めると、同じ方向へ行く旅人が多く、ユリアラは興味深くその姿を見つめた。 灰色っぽい服装で、体に巻き付けるような服装だ。 ユリアラは、自分たちの軽装を見て、浮いているなと思った。 街の外れまでは結構歩き、ユリアラは少し疲れたが文句は言わなかった。 その街の外れには馬車屋が多く、どこを選べばよいのか判らない。 クランは手近なところに入って、料金を聞いた。 「ムーリエまで1人6,000ディナリ。安いですよ」 「どんな馬車だ」 「6人掛けの普通の馬車です。人数が集まり次第出発しますよ」 そう聞いている間に1台、また1台と出て行くようだった。 「あと2台だ。お客さんどうするね」 クランは迷っている暇はないと思った。 「2人分頼む」 「はい、お2人さん、次の馬車でムーリエまでね。馬車は裏手だよ」 そう言われて行ってみると、ひどく頼りない作りの馬車だった。 「乗車券出して。途中、カラムで昼休憩を取るよ。そのときに乗車券を見せてまた乗って」 急いで乗るように言われてユリアラを奥の窓際に座らせる。 座席は窮屈で、残る4人が乗ると動き出した。 馬車内での会話はなく、無言で、時折馬車を休めて4時間、カラムに着いた。 「休憩は1時間。時間になったら出発するんで、乗り遅れないようにね」 そう言われて、乗り合わせた一同は解散した。 クランとユリアラは手近な食堂で食事を済ませ、周りをぐるりと見回す。 男たちが多く、クランやユリアラたちのように馬車の昼休憩のようだった。 時間前に先ほど降りた馬車のもとへ行くと、乗車券を見せてなかに入る。 人数が揃ったためか、それじゃあ出発しますよと声を掛けて、馬車は動き出した。 窓の外は見渡す限り荒野で、特別なものはない。 やはり無言で4時間が経過し、ムーリエに到着した。 まずは宿を見付けようと、クランとユリアラは宿の多い通りへ行った。 1軒目はハルトで泊まったのと似たような雰囲気で、聞くと朝食付きで1人ひと部屋8,000ディナリだった。
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