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それからクランは、窓の外を見て、考えに沈むようだった。
ユリアラはその様子を見て、自分も窓の外の様子を見ることにした。
馬車は、邸のあった小高い丘を下りて、街中を走行中だった。
船着き場まではそう遠くない。
今、向かっているハクラ港には埠頭が4ヵ所あって、そのうち、第4埠頭が客船の発着場となっている。
馬車がその第4埠頭に着くと、クランとユリアラは馬車を降り、客船案内所に向かった。
客船のうち、クランは、セイ島への連絡船ではなく、カザフィス王国のハルト港に向かう船の乗船券を求めた。
連絡船とは、セイ島とこの第4埠頭を繋ぐためだけの船で、外洋には出られない。
ユリアラは、ほんとうにアルシュファイド王国を出るのだな、と一気に緊張した。
アルシュファイド王国は平和な国だ。
街路の安全は保たれていて、女1人でなんの危険もなく歩ける。
だが、子供に世間のことを教える場である学習場では、世界にはそのような国は少ないのだと聞いた。
だから旅行に出るときは充分な備えが必要なのだ。
ユリアラは、腰に付けた彩石(さいしゃく)袋を触った。
どれほど必要になるか判らなかったが、ないよりはいいだろう。
彩石とは、人の異能を助ける働きを持つ石だ。
異能とは、世界にただひとつのこの大陸に住む人すべてが持つ、土、風、水、火の力のことだ。
その身内に持つ配分は個々に違うため、異能と呼ばれている。
「ユリアラ」
クランに呼び掛けられ、乗船券を手渡された。
行き先が印刷され、今日の日付が印判により押されている。
「8時出港だ」
クランの言葉に頷いて、ユリアラはその後を追った。
カザフィス王国行きの乗降口に行くと、すでに乗船は始まっていて、クランとユリアラは乗船券を検めてもらい、船に乗り込んだ。
クランの後に付いて船内に入ると、そこは広い客室だった。
船首側は固定された椅子が並べられており、その後ろの両側は、膝より高い段差のある区画で、靴を脱いで上がるように書かれてあった。
クランが横の棚に靴を置いてその場所に上がったので、ユリアラもそれに倣った。
クランは窓際に寄ると、座って出港前の港の様子を眺める。
ユリアラも同じく様子を見ていると、やがて船は動き出した。
「そういえばユリアラ、選別証明書は持っているか」
ユリアラは聞かれて、選別証明書の入っている小さめの手提げ鞄を開いた。
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