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「享也君のこと、ですよね」
「ええ。小暮さんのことについて、まずは出会いのほうから聞かせてください」
そう言って、遊星はノートを開いた。
「彼とは、私が看護師だったときに知り合いました。彼は大腿骨を骨折して、全治三ヵ月との事でした。私は彼とよく話しました。出身地や趣味、本当にいろいろなことを話しました。それで、私たちは次第に魅かれていきました。私たちは、来月に結婚する予定だったんです。
まさか、こんなことになるなんて……」
彼女の言葉は最後、嗚咽にかき消された。目から流れる涙は、頬を伝って震える膝へと落ちていった。
澪の様子を見て、遊星は心を打たれたようだった。婚約者を殺された可哀相な女性。その涙ぐむ様子が彼の心を打ったのだろう。
一方、湊人は澪に疑いを掛けていた。享也の部屋が異様に綺麗だということが、湊人の心に引っかかっていた。部屋の異様な綺麗さ、作られた美しさ。湊人にはそう感じられたのだ。
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