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「さて、話してもらおうか。二人の大井澪の存在について」
翔大は最初、黙ったままだった。数分の沈黙があり、やっと彼は口を開いた。
「彼女たちは全くの別人やし、俺は、一刻も早く捜査を終わらせようと自分で調べていただけや。信じてくれ」
「翔大の言う事は信じられない。ごめんね」
遊星はきっぱりとそう言った。
「そうか。まあ、次は新しいほうの大井澪を調べるこっちゃな」
翔大は言い残して部屋を出て行った。
「翔大のあの性格は困ったもんだな」
「高校のときのあだ名、『男版淀殿』だったっけ」
「そういえばそうだな。『男版淀殿』とはよく言ったもんだ」
「翔大、変わらないね。ずっと湊人の事を意識してる。ライバル意識っていうやつ?」
遊星の言うとおり、翔大は高校生のときから湊人を目の敵にしている。なぜかは全く分からないし、彼自身も語ろうとはしない。
だが確実に湊人を敵視していた。
いや、していたのではなく、しているのだ。
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