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もう一人の澪とは違い、こちらは殺風景な部屋だった。壁紙も白、床も何の変哲もないフローリングだった。家具もそこら辺の家具屋に売っているようなもので、普通の部屋だった。
「どうして閉めようとしたんだ」
澪はうつむいて何も答えない。
「黙っていても何も分からない。そうだな、二人の大井澪。何か知っているか」
すると彼女は顔を上げ、閉ざしていた口を開いた。
「私が、大井澪です。彼女は本当は、河原ひかりという名前です。彼女は私の大学時代の友人でした」
澪が話す言葉に影があるのは気のせいだろうか。湊人はそんな印象を受けた。
「なぜひかりさんがあなたの名前を使っているのか、その理由を知っていますか」
すると澪は首を横に振った。ため息をついてその場を立ち去ろうとしたとき、彼女は湊人の袖を掴んだ。
「どうした」
「実は私、ある人に脅されているんです。助けてください」
「ある人というのは、中井徹のことか」
彼女は目を見開いた。どうやら当たりのようだ。湊人は姿勢を正す。
「その話、聞かせてくれないか」
「彼は私の元カレです。そして彼の恋人のひかりも、私を脅してきたのです」
澪は息を吸い込んで、
「彼らが、小暮君を殺しました」
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