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「んじゃ、事件について説明するけど、準備はええか」
遊星はノートを取り出して頷く。翔大はそれを確認してから喋り始めた。
「事件は、都内のあるマンションで起きた。被害者は、小暮享也。彼は仕事に就いてへん、いわゆるニートやな。それでも彼の両親が資産家やったから、生活に不自由はなかったらしい。
彼は拳銃で、右のこめかみを撃って死んでた。凶器も、右手に握られていた拳銃やと確認された。一課の見立てでは、自殺ちゃうかと考えてるようやけど、調べて欲しいらしいわ。……森嶋、聞いとるか?」
翔大の説明の間、湊人は一切メモを取らずに目を閉じて腕を組んでいた。一見すると寝ているように見える。
「ああ、大丈夫だ。続けてくれ」
「その言葉、信じるで。彼には婚約者がいて、大井澪っていう子なんやけど、その子が第一発見者でもあるんやって。警察が現場に駆けつけたときにはかなり取り乱していたそうで。かわいそうやなぁ」
「翔大、感想はいらない。事件の概要についてだけ話せ」
「はあ。分かった分かった」
湊人の容赦ない一言に、翔大はため息をつく。
「それで、解剖して調べた結果、小暮が死亡したのは一昨日の午後五時やって。なんか質問はある?」
湊人と遊星は首を横に振る。
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