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33歳の私
「大丈夫。きっとうまく行くさ」
待合室のベンチ。将人はそう言って私の左手を優しくなでてくれた。
将人の右手が私の左手の指輪に触れる。2年前にくれた結婚指輪だ。
不妊治療を始めることは決まった。だが、私の脳裏にある不安は消えない。
私にはもう、子どもを産むことはできないのではないか?
1度目の理由は教師と親からの猛反対。
2度目の理由は相手が抱えていた多額の借金。
3度目の理由は相手の親からの圧力。
私は私に宿った命を消してしまった。しかも、3度も。
やっと、やっと心の底から愛している人と結ばれたのに。裏切られ、傷つけられ、ボロボロになりながらやっとたどり着いたのに。
私の罪は消えないのだろうか。
私達の隣に母娘が座る。子どもは恐らく10代後半だ。
もう一度10代からやり直すことができたら……
時を戻せるのなら……
叶わぬ想いが頭をよぎる。
私はその娘を睨みつけた。
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