44歳の私

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44歳の私

「では行って参ります」 黒井さんが笑顔で言う。1年前から世話になっているヘルパーさんだ。 「よろしくお願いしますね」 私は笑顔で黒井さんと7歳の息子、陽光(ひかる)を玄関から送り出した。大好きな黒井さんとのお出かけがよほど嬉しいのか、今日公開の「怪物クロック」映画版がよほど楽しみなのか、陽光は出かけ際に満面の笑みを見せてくれた。 私も笑顔で手を振る。 隣の家の家族がドアから出てきた。子供2人とどこかへお出かけだろうか。 私は隣の家族を穏やかな気持ちで見つめた。 何が正しくて、何が間違いなのか。私には分からない。 でも、私にはどうしても、必死でお腹を蹴ってくる陽光を見捨てることができなかった。 そしてそんな私を、将人は心の底から受け入れてくれた。 「障がいを持つ子どもを抱えて可哀想」 「ダウン症と分かっていて産むなんて、子どもが可哀想」 陰でそう言う人は、居る。 でも、私にとって陽光は、最愛の息子だ。 それ以上でもそれ以下でもない。 そこにたとえどんな条件が付いてきても、だ。 私にとって陽光は、陽光でしかない。 そして、そんな最愛の陽光と、最高のパートナーである将人に囲まれた私は、誰が何と言おうと幸せだ。そして、将人と陽光と一緒に、もっともっと、もっと幸せになりたい。 そう。私が消してしまった3つの命の分まで。 だから私は、もう睨まない。 私は再び家の中に入り、エプロンを着ける。 今日は快晴。絶好の洗濯日和だ。 終わり
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