愛されなかった者

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自分の部屋は二階にあって階段を降りた先がリビング。階段をゆっくりと下りて、キッチンに向かって冷蔵庫から食材を出す。 フライパンで炒めて、それと同時にオーブンで食パンを1枚焼く。 こうして10分後、今日の朝食一人分が出来る。テーブルに置き、テレビをつけて食べながら見る。 最近のテレビはなんだか暗い話ばかりだ。 強盗があったり、人が自殺したとか。 こういうのを見ていると、『なんて世界は残酷なのか』と、思う。 でも、私には、自殺という楽になれる手段を選びたくはなかった。 朝食を食べ終われば食器を洗って歯磨きをする。自分の部屋に戻って髪の毛のセット、そしてカバンを持って玄関の扉から出る。 いつもこれを一人でこなす。 「行ってきます・・・。」 静かにそう言って家を出た。小学校2年生位からずっとそうだった。昼も夜も自分でなんでもやらなければならなかった。 何故なら、家にいるのは自分ただ一人。 そして、これからも一人で生きていく・・・。 そう、生きていくしかないんだ。そう思っていた。
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