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もしこの世に神様がいるとしたら、神様はあまりにも贔屓が過ぎる。
それとも、とっても怠慢な性格で人間全員のことが見えていないのだろうか。
はたまた私は生まれてくるまでのどこかで、何か悪い行いをして、神様の怒りを買ってしまったのだろうか。
「神様、聞いていますか?」
ねえ、両手を合わせて必死に祈っても知らんぷりですか?
とかく、この世はあまりにも不公平だ。
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私は今日、身を売ることになった。
この国では『身売り』は合法的なものとして、ある種の商売として扱われている。
正式には「家族及び本人の同意があった場合の身売り」だけど、実際はそんな建前あってないようなもの。金目当ての親が子供に無理やり同意書にサインをさせ、そのまま身売り商へと引き渡してしまうというのは、貧しい田舎町では割とよくあることだ。
他の国の身売りの仕組みはよく分からないけど、この国では家具屋や靴屋と同じような職業の一つとして、身売り商というものがいる。身売り商は一定の決まりに乗っ取って、十七歳以上の少女を引きとり、商品として扱うことが許可されている。さらに身売り商から少女を買い取った購入者は、彼女たちを所有物として自由に扱うことが法的に許されている。身売り商に引き取られた時点で……少女たちは「人」ではなく「物」だからだ。
召使いにすることもできれば、奴隷のように従わせたり、己の欲を吐き出す道具にすることもできる。もしくは……殺して、臓器を取り出し、その臓器を売買することもできる。
せめて人としての扱いをしてくれる購入者に出会いたいというのが身売り少女たちの願いだが、そもそも人間を購入しようとする人たちだ。まともな人間は少ない。
そんな希望、持つだけ無駄だ……と、私は思った。
こうなってしまったら最後、私たちは命を投げ捨てたも同然なんだから。
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一通り手続きを終えたらしい男性がこちらにやってきて、そっと私の顔を覗く。髪と同じ、ハチミツみたいな金色の瞳が綺麗だと思った。不覚にも、綺麗だと思ってしまった。その澄んだ瞳で何を考えているのかは、全くわからないけれど。
彼は、そのまま薄く微笑むと、
「行こうか」
とだけ言って、私の手枷を外した。
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