『Halloween cruise』へようこそ!

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『Halloween cruise』へようこそ!

「今宵は『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』特別企画『Halloween cruise』にようこそおいでくださいました。どなた様も日常の喧騒を離れ、寛ぎのひと時をお過ごしください。」  そんなアナウンスが船内に流れると同時に汽笛を鳴らし、大型客船『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』はその優美な姿を滑り出させた。  アナウンスの通り、特別企画と銘打たれた今回のクルーズは、夜が明けるまで船内で自由に過ごす事が出来る。だが、乗客たちは皆、船内にある大型のシアタールームに集まるように指示されていた。  特別企画『Halloween cruise』の招待状を受け取った乗客は、船の規模に対してみればかなり絞られているようだ。見知った顔ぶれもあれば、まったく見知らぬ乗客もいる中、数分もしないうちに場内が暗闇に包まれた。  突然の出来事に俄かにざわめく乗客たちの顔を、大きなスクリーンに映し出された映像が照らし出す。  ホラー映画のような様相を呈したストーリー。スクリーンの中では優美な客船が海賊たちに襲われ、無残にも沈んでいくさまが映し出される。そして、その映画の中の舞台は紛れもなくこの船『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』だった。  映像が終わり、静まり返った暗い場内にアナウンスが響き渡る。 「おや。今宵は未練ある者たちの宴の筈…。それなのに生者が紛れ込んでしまったようだ。しかし残念ながらこの船はもう引き返せない。夜が明けるまで…あなた方は死霊と一晩を過ごす事になるという訳だ。くれぐれも、魂を奪われませぬよう…」  明かりが燈る。だが、薄暗く照らされたシアタールームは、その様相を一変させていた。いつの間にかスモークが炊かれ、限りなく視界が悪い。ざわざわと場内は騒がしくなった。
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