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胸焼けがした。
たぶん、妻のせいじゃない。
妻のおならのせいでもない。
そう思いたい…。
_今夜はクリームシチューだった。
少し[ルー]が濃かった。
特別な手間は一切ない。
市販の[ルー]を溶かしただけのクリームシチュー。
玉ねぎ、人参、ジャガ芋、豚肉または鶏肉をカットして鍋に入れ、火を通す。
そこに市販の[ルー]を投入して、ひと煮立ちすれば完成だ。
投入する[ルー]を変更すれば、カレーにもなる。
醤油や みりんを使えば肉じゃがだ。
味噌を入れたなら豚汁にだって化ける。
どれも、妻自身は得意料理と思っているようだ。
_子宝には恵まれなかった。
その点について不満は無い。
けれど、思い出したように、さみしいと感じることが、あるにはある。
夫婦ふたりの食卓は、次第に、そして自然と、質素になった。
今夜のメニューは、クリームシチューと白いご飯。
別の小皿にあったのは、白菜の漬け物だけだ。
ひともんちゃくあった。
カレーや 肉じゃが ならば、白米に漬け物があれば文句は無い。
が、クリームシチューとなると、黙っていられない。
せめてスーパーのお惣菜でも構わないから、コロッケとか、アジフライとか、もう一品くらい何か用意できなかったのか…。
事実、豚汁の時には、それらがあるのだ。
_ながーい沈黙。
妻は ふて腐れた。
食事が終わったら、さっさとリビングのソファーに寝転がった。
_皿洗いは僕の役割だ。
結婚当初に、そのように躾られてしまった。
洗い物を終えてリビングに行くと、妻が寝息を…、
いや、ガー…、ガー…、ヒュー…。とやりだした次第だ。
その妻が、ガバッ!と突然 起きあがったから、こちらも飛びあがって驚いた。
妻が涙目でこちらを見ている_。
「怖い夢 みちゃった…」
_僕に若い女性ができた夢だと言う。
僕は静かに微笑んだ。
そうして、すっかり柔らかく熟れた妻の躰を抱き寄せて、抱きしめた。
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