普通の人

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 実際に寝た人。 その気になれば寝たであろう人。 可能性のあった過去の男たちの誰を選んでいたとしても、 きっと今よりは ‘‘しあわせ’’ になれていただろう。 なんで あたしは、こんな男と一緒にいるんだか。。 ○  フクジは、イソハチとフミヨのひとり息子だ。 間違いない。 『二九二』と書いて、‘‘ふくじ’’ と読ませる。 父のイソハチは、『五十八』。 母のフミヨは、『二三四』と書く。 『五十八』+『二三四』=『二九二』 間違いない。  ちなみに、イソハチの父(フクジの父方の祖父)は、五六(ごろく)。 フミヨの母(フクジの母方の祖母)は、三十(みそ)。 家系図にすると、代々 着実に数字が大きくなっている。  もうひとつ ちなみに、彼らが何か特別に、数字に強い遺伝子を持っているわけではない。 数学の教師になった者もいないし、学校の成績も平凡だった。  更にもうひとつ ちなみに、フクジの苗字は『薮坂(やぶさか)』。 __なんか 惜しい。  さて、ここまで紹介しておきながら、フクジは物語の主役じゃない。 この先、フクジが物語のカギを握る重要人物に育っていくこともない。(たぶん。) ○  自分でも自分を残念に思うくらい、愛想笑いというものが下手だ。 そもそも、他人のそれも好きじゃない。 ましてそれが、引き笑いだったりすると、虫ずが走る。 少しも、全く、これっぽっちも、面白いと思っていないのに、、 ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ、と引きながら続く愛想笑い。 100%、その人の人格を嫌悪する。 あたしは、この男を心の底から嫌いだ。 ○  日本人の死亡原因 第一位が殺人となったと、ネットのニュースが騒いでいた。 治安が悪化したのではない。 医学の進歩が、病気やケガでは なかなか死なせなくなったのだ。  つまり、誰かに確実に殺されでもしない限り、死ぬことがない。 あるいは、自らの手を汚して殺してやらなければ、死んでくれない。  寿命まで生き抜いて 老衰で息絶えるよりも、その途中で、誰かに殺意を抱かれる確率の方が高いとなれば、それはそれで 恐ろしい世の中になったものだ__。
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